ヒルビリー・エレジーで感じた、アメリカの“努力信仰”と競争社会のリアル

本レビュー

日本では「努力は美徳」と言われるけれど、最近読んだ『ヒルビリー・エレジー』を通して、アメリカの“努力信仰”は桁違いにストイックで、その背景にはとてつもない競争社会があるのだと実感しました。

この記事では、J.D.ヴァンスの回顧録『ヒルビリー・エレジー』をもとに、アメリカ社会の構造や日本との違い、そして読書を通じて感じた価値観の揺らぎについて整理してみます。


📖 『ヒルビリー・エレジー』とは

著者J.D.ヴァンスは、アメリカ中西部・オハイオ州出身。アパラチア地方にルーツを持つ“ヒルビリー”と呼ばれる白人労働者階級の家庭に生まれ育ちました。

彼の家庭は、アルコール依存・ドラッグ・家庭内暴力など、いわゆる「貧困の連鎖」のなかにありながら、海兵隊への入隊、大学進学、エリート教育(イェール・ロースクール)を経て、階層を越えていくサクセスストーリーです。

2022年には、アメリカ中間選挙で上院議員に当選。翌年にはウクライナのゼレンスキー大統領との会談が報じられ、一躍注目を集める存在となりました。

ただ、この物語は単なる逆転人生の礼賛ではありません。彼の成功の陰には、数々の偶然と、社会の“構造的な格差”があったことが繰り返し描かれています。、アメリカ中西部・オハイオ州出身。アパラチア地方にルーツを持つ“ヒルビリー”と呼ばれる白人労働者階級の家庭に生まれ育ちました。

彼の家庭は、アルコール依存・ドラッグ・家庭内暴力など、いわゆる「貧困の連鎖」のなかにありながら、海兵隊への入隊、大学進学、エリート教育(イェール・ロースクール)を経て、階層を越えていくサクセスストーリーです。

ただ、この物語は単なる逆転人生の礼賛ではありません。彼の成功の陰には、数々の偶然と、社会の“構造的な格差”があったことが繰り返し描かれています


💡 アメリカの「努力信仰」とその背景

読んでいて強く感じたのは、アメリカ社会における“自己責任論”と“努力信仰”の強さです。

  • 社会保障が薄く、失敗しても助けてくれる仕組みが乏しい
  • 公教育の格差が激しく、家庭や地域に依存する
  • 教育や出世は「自力でつかみ取るもの」という文化

こうした前提があるからこそ、「這い上がった人間」への評価が異様に高く、逆に“失敗した人間は努力が足りない”という見方も強い。

ヴァンス自身も、苦しい家庭環境を「抜け出す」ためには、自分で規律を持って努力し続けるしかなかったと語っています。そのストイックさは、日本的な“コツコツ型の努力”とはまた違う、もっとサバイバルに近いものだと感じました。


🔁 日本との違い

日本にも競争はありますが、次のような違いがあります:

  • 教育機会が比較的平等に与えられる(義務教育の水準が高い)
  • 家庭が崩壊していても、社会福祉や学校がある程度フォローする
  • 「頑張れば報われる」という信念が、ある程度現実に根ざしている

つまり、日本では“努力する余地”が比較的与えられていて、社会のセーフティネットがまだ機能している。アメリカではその前提が崩れていて、「努力するしかない/しないと沈む」社会なのです。


🤔 読んで感じたこと

自分は今まで「努力すれば報われる」という価値観に安心していたけれど、この本を読んで、それがどれだけ恵まれた環境に支えられているかを実感しました。

また、アメリカ的な“競争を勝ち抜いてきた人”の強さと、そこにある孤独や痛みも垣間見えました。努力が美談として語られる裏には、競争社会の過酷な現実がある。

“自分の頑張り”を信じることと同時に、他人の置かれた環境や背景にも目を向けたい。そんなふうに感じさせてくれる一冊でした。


📚 まとめ

『ヒルビリー・エレジー』は、単なる成功譚ではなく、現代アメリカ社会の分断と格差、そして“努力するとはどういうことか”を問い直す一冊です。

日本にいる私たちにとっても、「努力」や「競争」をどう捉えるか、改めて考えるきっかけになる本だと思います。

特に、自分や他人の“頑張り”を評価するときにこそ、読んでおきたい一冊です。

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