なぜ国内SaaS企業はマルチプロダクト戦略を選ぶのか?

Saas/ITツール

国内SaaS企業の成長戦略を見ていると、単一の主力製品で突き抜けるというよりも、複数の製品を連携・横展開する“マルチプロダクト戦略”を採用する企業が目立ちます。SmartHR、マネーフォワード、freee、そしてラクスなどはその代表例です。

本記事では、なぜ国内SaaS企業がこの戦略を選ぶのか、背景とメリット、課題を整理してみます。


🚧 単一プロダクトの限界とLTV最大化

SaaSモデルはストック型であるがゆえに、顧客維持(リテンション)とLTV(顧客生涯価値)の最大化が極めて重要です。しかし、単一プロダクトではいずれ成長が鈍化し、売上の伸びに限界が来るフェーズが訪れます。

また、SaaSは広告・インサイドセールス・カスタマーサクセスなどの獲得/維持コスト(CAC)もかかるため、一人あたりの顧客から得られる売上を高める=アップセル/クロスセルが求められます。


✅ マルチプロダクトの利点

  • 📦 既存顧客への横展開が可能:導入ハードルが低く、営業効率が高い
  • 🔄 一気通貫の価値提供:業務プロセス全体に沿ったソリューションを展開可能
  • 🔗 データ連携による差別化:プロダクト間連携で独自の価値を創出
  • 🧱 PMF失敗リスクの分散:複数の柱を持つことで、経営の安定性が増す

結果として、売上の継続性・拡張性が高まり、エンタープライズへの展開も進めやすくなります。


🏢 国内SaaS企業の代表的な事例

🧮 マネーフォワード

  • 会計からスタートし、給与・請求・経費精算・BPOなどに拡大
  • バックオフィス全体を押さえる「横展開」戦略が明確

🧑‍💼 SmartHR

  • 人事労務→人材マネジメント(分析、サーベイ、育成)へと領域拡大
  • 「人事データ基盤」を軸に給与計算などアップセル構造を設計

🗂️ ラクス

  • 楽楽精算、楽楽明細、楽楽販売、メールディーラーなど複数展開
  • 「業務効率化」という共通テーマで統一された横展開

🇯🇵 なぜ日本企業に多いのか?

日本市場特有の要因としては以下が考えられます:

  • 🧭 市場規模が限定的 → 単一プロダクトではスケールしきれない
  • 🏢 中小企業中心の商習慣 → 幅広い業務を一社でまとめて効率化したいニーズが強い
  • 💪 営業力が強い文化 → 横展開によるクロスセルが得意

⚠️ 課題と今後の展望

もちろん、マルチプロダクト戦略には課題もあります。

  • 🛠️ 開発リソースの分散と優先順位の難しさ
  • 🏗️ 組織・営業体制の複雑化
  • 🧩 プロダクト間連携の技術的負債

それでも、グロース以降のSaaS企業が持続的な成長を狙うには、有効な戦略の一つといえるでしょう。特に“業務データの統合”という観点では、日本企業の業務課題にフィットしやすく、今後も有力なトレンドとして継続しそうです。


📝 まとめ

マルチプロダクト戦略は、単なるプロダクトの数合わせではありません。顧客の業務全体に寄り添い、LTVを最大化するための「顧客価値中心」の戦略です。

今後も、プロダクト開発力だけでなく、組織横断的な戦略設計とデータ活用力が、SaaS企業の競争力を決めていくはずです。

この記事にはアフェリエイトリンクを含みます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました