『死に至る病』と現代人の不安 —— キュルケゴールに学ぶ「絶望」との向き合い方

本レビュー

最近読んだキュルケゴールの『死に至る病』は、難解な哲学書でありながら、現代人が抱える不安や自己喪失の感覚と深くリンクしていて驚かされました。

この記事では、「死に至る病=絶望」という概念を軸に、現代の私たちが抱える問題とどう結びつくのかを整理してみたいと思います。


🧠 『死に至る病』とは何か?

キュルケゴールは、19世紀デンマークの哲学者であり、実存主義の祖とも言われる人物です。

本書『死に至る病』の冒頭で彼は、「死に至る病とは“絶望”である」と定義します。ここでいう絶望とは、単なる落ち込みや気分の落差ではなく、自分という存在を正しく見いだせず、自分を肯定的に生きられない状態のことです。

  • 自分であることに耐えられない
  • 他人の目ばかりを気にしてしまう
  • 本当の望みや価値観がわからなくなる

これらすべてが、キュルケゴールのいう「絶望」の一種であり、自己を見失うことが“死に至る病”なのだと説いています。


🤯 なぜ今こそ“絶望”が問い直されるのか?

SNSの普及、働き方の変化、先の見えない社会不安……私たちはかつてないほど「比較」と「孤独」にさらされる時代を生きています。

  • 周囲と比べて自分だけ遅れている気がする
  • なんとなく毎日が虚しい
  • 本当は何がしたいのか分からない

こうした感覚は、現代社会がもたらす“静かな絶望”ともいえます。そしてその根底には、自己をうまく掴めないことへの苦しさがある。

『死に至る病』は、単なるメンタルの問題ではなく、「どう生きるか」という人生の問いにまで踏み込んでくる哲学書なのです。


🔍 キュルケゴールが示す解決のヒント

キュルケゴールは、「人間は“自己”として生きることを選ばなければならない」と説きます。

つまり、

  • 他人に合わせるのではなく、自分の真の価値観に従うこと
  • 社会のテンプレートではなく、自ら選び取る人生を生きること

が、絶望を乗り越える鍵だということです。

この考え方は、現代で言うところの「セルフコンパッション」や「自己一致」といった心理学的概念とも通じるところがあります。


🪞 読んで感じたこと

自分自身、会社員として生きていく中で、「これって本当にやりたいことなんだろうか?」と感じる瞬間がたびたびあります。

SNSではキャリアや育児、投資に成功している人が目に入り、自分は何者にもなれていないような感覚に陥ることもあります。

そんなときに『死に至る病』を読むと、

「そもそも自分は、何を基準に“なりたい”と思っていたのか?」

という問いが浮かびました。

キュルケゴールは、正解を教えてくれるわけではないけれど、「自分自身でいようとすること」こそが人生の本質だと教えてくれる。そんな気がします。


📚 まとめ

『死に至る病』は、時代を越えて「生きづらさ」に効く哲学書です。

現代の不安や自己否定感に悩んでいる人こそ、自分という存在を深く見つめるきっかけとして、ぜひ手に取ってみてほしい一冊です。

難解だけど、読むたびに少しずつ響き方が変わってくる——そんな言葉の力がこの本にはあります。

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